私は観光業界で20年働いております。
現在44歳ですが、大学卒業後、最初は旅館のフロントから始めました。
当時の年収は300万に満たないほどでした。
そこで役職が上がるにつれ、グループ会社の土産物と団体食事店の責任者を任されるようになりましたが、年収は350万ほどでした。
その会社には約11年お世話になったのですが、やはり収入を上げたくて、転職という道を選びました。
次に勤めたのは、土産物と特産品の手作り体験ができる観光施設の営業職でした。
日本全国を飛び回り、旅行会社に営業をかけ、団体のお客様を獲得するという仕事でした。
そこでやっと年収400万ほどになったのです。
2年ほど勤めた時、ある旅館の支配人からお声をかけてもらい、そこでの営業職に転職することが決まりました。
そこでの最初の年収は350万ほどです。また、年収は下がることになりました。
しかし、観光業界に携わる身としては、やはり宿泊の仕事がしたかったので、とにかく仕事に邁進しました。
それから約10年経ち、現在はそこで役職も上がり、仕事の裁量や責任も増えましたが、年収は400万ほどとなりました。
現在身の回りに起きている変化について
現在の観光業の変化で一番感じるのは2つです。バブル期の旅行ブームからかなり観光の在り方が変わってきました。
- 年収の低さからくる人手不足
- 施設の老朽化と建設費用
現在観光業界を取り巻く問題点としては、総じて人手不足があげられます。また、個人の年収が低いところも人手不足に拍車をかけるところがあります。
特に旅館業というのは装置産業のため、まずハードに経費がかかります。
10年スパンであらゆるものが老朽化し、メンテナンスはかかせません。そして、やはりお客様満足度を上げるためには人手がいります。
つまり、売上の大半は設備投資と人件費に消え、利益はあまり残らない構図です。
しかしその両方にお金をかけないと、お客様満足度は下がり、売上が立たなくなります。
ホテルのように効率化を目指すところもありますが、やはり、旅館という特性を活かすのは人のおもてなしの温かみだと考えます。
客層も大体から個人旅行へと20年で変化した
お客様もこの20年で様変わりしました。
昔は社員旅行などの団体客も多く、景気も良かったので、宴会なども少なくありませんでした。
今よりも子供の数も多かったので、修学旅行などで一人1畳などの詰め込み利用もありました。
その後景気の悪化に伴い、団体客は減り、旅行は個人へとシフトしていきます。
また、インターネットの発達に伴い、国内旅行は旅行会社経由ではなく、インターネットサイトからの予約に変わっていきました。
さらにはインバウンド需要の高まりに呼応して、外国人観光客が増加し、逆に日本人客が来なくなる地域も出てきました。
そして現在、コロナウィルスの影響により、旅行自体が激減致しました。
最近ではgotoトラベルキャンペーンの効果で少し活気を取り戻した感はありますが、まだまだコロナ前には戻っていません。
観光業界、特に旅館業というのは来てもらわないと成り立ちません。
旅館という建物にお金をかけて、その空間内で過ごしてもらうことに価値があります。なので自粛という状態では1円も売上を立てることができないのです。
しかし、これからはアフターコロナという状況を見据え、多種多様なお客様への対応と、需要を喚起させる施策を考えていかなければなりません。
観光業界で必要とされるスキルと人材について
団体客が多かった頃は、機械的に作業をこなしていけば良かったのです。マニュアルに忠実に、作業効率を考えて、行動が速い人が必要でした。
しかしそれは次から次へとやってくるお客様がいてこその人材でした。個人客が増えた今これからは自分で考えることができる人が必要になってきます。
年々お客様は多種多様になっていきます。
既存のマニュアル、いやもはや接客業にマニュアルは意味を成しません。
もちろんルーティンの作業には必要ですが、お客様に選んでもらうもお客様に宿泊して頂くも、すべてマニュアルでは対応しきれません。
そのため、相手の気持ちや行動を先回りして考えられ、それを実行するにはどのようにすれば良いかを、自分で考えられる人が必要です。
- 観光先での提案
- 地域に密着したイベントの提案
- 郷土料理や自然に対する知識
臨機応変にこのような対応が必要になります。
言われたことだけを対応するなら機械でできる時代です。とあるホテルではAIロボットがフロント対応致します。
自動チェックイン・チェックアウトができるホテルなんてざらにあります。
しかし、旅館業ではそういったホテルとは違い、旅館特有のおもてなしをしていかなければ意味が無いと思います。
おそらくディープラーニングができるAI時代なので、人の気持ちもデータ化すれば、AIロボットが読み取れるようになるだろうとは思います。
でも今はまだ、相手の空気感や受けた感情を瞬時に読みとり、その対応をするのは人であると思います。
また、お客様への直接接客はもちろんですが、どうすればお客様に選んでもらえるか、どのような料理が良いか、どういう部屋のしつらえが良いか、お客様が来る前から帰られた後までを考えて行動に移せる、館内連携が取れる人材が必要だと思います。
今後、他の業界でもあらゆることが効率化されていくと思います。
もちろん旅館や観光業でも無駄は省き、効率化すべき点は多々あります。そこでどこをどういう風に効率化するかも考えなければなりません。
旅館というのは保守的な経営やスタイルが続いています。
どちらかというと受け身の印象があるかと思いますが、今伸びている施設は、大体革新的な考えをもつ人材がいるところです。
そういうことからも今後は自分で考え行動できる、マニュアル人間・指示待ち人間とは真逆の人材が必要だと思います。
観光業の現場で役立ったと感じたスキルや資格
旅館業や観光業界で有利になる資格は以下の通りです。
各種語学検定
英語のTOEICやTOEFLが650点以上あると有利です。
現在はコロナの影響で外国人観光客は少ないですが、今後も絶対外国人観光客はたくさん来ます。
そういった中で、まずは英語が基本となります。
どの程度話せるかの基準はやはりTOEICなどの点数で判断します。
英語以外では中国語検定です。
中国はやはり巨大なマーケットで、これからも訪日観光客は増えるでしょう。
しかし、中国人は英語も通じないことが多く、中国語が話せるというのは重宝する人材です。
サービス接遇検定
これはその名の通りサービスやマナーの能力検定です。
ホテルとは違い旅館業は実地で接客を覚えることが多いのですが、最初から基本が身についているというのは有利な人材です。
基本の接客マナーを身につけた上で、その施設や地域の特性を活かした自分なりの方法にアレンジしていってほしいです。
ネットマーケティング検定
今や旅行の大半はインターネットを使用して行います。
宿泊場所探しから交通機関、ご当地の情報までありとあらゆるものがインターネットで検索されます。
なので、本格的な知識までは必要ないですが、Webに関する知識・ネットマーケティング・Webブランディング能力などがあれば有利ですし、重宝されるでしょう。
おもてなし検定
言わずと知れた「おもてなし」の能力検定ですね。
日本国内のみならず、外国人観光客にまで日本のおもてなしの高さは評価されています。
旅館業のみならずホテルでも重宝されると思います。
ご当地検定
旅館業ではどの部署においてもご当地や特産品とは切り離せません。
接客はもちろん新たなプランや料理を考えるのにも有利です。
他にも普通免許やボイラー技士などありますが、上記があると観光業界や旅館業では有利だと思います。
今後観光業に関わりたい方へ
観光業界、旅館業やホテル業では多種多様なお客様が対象となります。
一見華やかに見える部署でも、かなり地道な作業が必要なことも多々あります。
また、観光業界は贅沢産業ともいわれ、景気に左右されることが多いです。
そんな中で、いかにお客様に選んでもらえるか、お客様に喜んでもらえるかを自分で考えることが必要となります。
観光業界は旅行会社も含め、年収の低い職業です。
しかし、それも受け身でいてはいつまでたっても変わりません。
よく「給料をもらう」と言いますが、給料は会社からもらうものはありません。
給料は「稼ぐ」ものです。
我々の対価は会社から支給されているのはなく、お客様から頂いています。
お客様が旅館やホテルに価値を感じてお金を支払うからこそ、我々の給料になります。
なのでお客様にサービスという目に見えないものに価値を感じてもらえるように、それぞれが考えなければなりません。
客室というのは在庫を保有できないものです。
今日必要とされなかった客室は、明日に持ち越すことができません。一日一日、一瞬一瞬が勝負です。
そのためにも指示を待つのではなく、マニュアルに頼り切るのではなく、考えるということが常に必要です。
ロボットが、コンピューターが接客できる時代になります。
でも、感性や温もりを代弁するにはもう少し時間がかかるでしょう。お客様も個の時代なら、働き手も個の活躍する時代です。
それぞれの思考のもとに、観光業界を盛上げていってください。
あなたの業界の意見お待ちしています!