図書館で働いて8年目になろうかという44歳です。最近では図書館が民間企業に業務委託されるケースが増えており、自分もその中の一つの会社で契約社員として勤務しています。
前の会社では自治体管理の公共図書館で勤務し、貸出・返却や予約受付、簡単な資料検索等カウンター業務の他、責任者としてスタッフの労務やシフト管理、クレーム対応や自治体との折衝や業務報告等です。
現在は同業他社で大学図書館へ移り、カウンター業務と資料管理・購入手続きを主に行っています。
時給換算のため収入としては月12~16万、年間で200万に満たないこともありますが、公務員として正規職員で働いてもそれよりやや多い程度です。
- 直接的に利益を生む仕事ではないため自治体の予算が回されない
- 専門職であるにもかかわらず誰にでもできる仕事と思われて社会的評価が低い
- 結果的に給料面での待遇が低すぎる
- 民間会社は業務委託だと一部の仕事しかさせてもらえないためスキルアップは望ない
- 指定管理だと公共施設にはそぐわないと社会的非難をされる
- 正規非正規を問わず単年契約が多く雇用の継続性がない
- 問題のある利用客が多くクレームやトラブルが絶えない
図書館司書の仕事がなぜAIに取って代わられるのか?
今のように世間で人気のある本を大量に購入して貸出したり、暇な人達が日がな一日新聞や雑誌を読んで時間を潰すだけの場所である限り将来性は極めて低いと言わざるを得ません。
貸出や返却・予約の受取などは機械でセルフ化ができるので、知識もスキルもない者は職を追われるか今より低賃金で単純労働に甘んじる事になるでしょう。
AIによる仕事の代替は既に始まっています。
分からない事は利用者自身がGoogleから調べたり、図書館のOPACで自分の読みたい本を検索し、お勧めの本はAmazonが示してくれるのでレファレンスの仕事も激減していきます。
そもそも日本の一般市民は、自分の生活で必要な知識や問題解決方法を専門的に学んだり調べたりするのに図書館を使うという発想が乏しいため、調べ物のプロとしての図書館司書の専門性を必要としていないのです。
今後ビッグデータ解析によるAIのリコメンド機能が買い物のみならず我々の生活全般に及ぶようになれば、「問題解決にどんな手段を使いどんな知識や情報が必要かを前もって教えてもらえる」ようになり、図書館の無料貸本屋化は不可避となります。
人手が必要になる仕事と言えば、返却された本の状態(汚れ、破損など)の確認、返却が終わった資料を棚に戻す、
他の館へ配送する資料を集めて箱詰めする、予約された取り置き本を取り置き棚へ入れ込む、壊れたり破れたりした本の修理や処分を行なう。
いずれも「モノ」としての本や資料を物理的に動かす肉体労働であり、展示や催事企画などのプランニングを除けば現状以上に給料が上がる見込みは少ないであろうと思われます。
電子書籍化のせいで図書館の意味はなくなっていく
今でこそ紙の冊子体が図書館資料の大部分を占めている状況ですが、本も雑誌も新聞も電子媒体が主流になってくればそうした人力による優位性もなくなってくるでしょう。
やがては利用カード登録や作成もセルフ式に変わるか、オンライン経由で行なわれ、生体認証によってカードすら不要になる。そんな時代が来るかもしれません。
館内の至る所に設置された防犯カメラと顔認証システムが連動し、素行の悪い者は自然と入りづらくなれば警備スタッフや巡回職員もいなくなるのではないでしょうか?
どれをとっても、専門職としての図書館司書にとっては非常に分が悪くなることは確かです。
司書の仕事がAIに奪われないようにできる2つのこと
既にカウンター業務の機械化、自動化も普及し、AIによる仕事の代替は避けられない現在、既存の業務内容にこだわり続けるだけでは無意味です。個人的に考えていることは2つあると思っています。
- デジタルアーキビスト
- 資料を通したコンサル
デジタルアーキビストの資格が図書館司書に求められている
デジタルアーキビストとは、後世に残すべき文化財や歴史資料、文書などを現物を損なうことなくデジタル形式に複製してデータベースで管理・保護し、必要に応じて適切な形式で活用までできる人間のことです。
図書館資料に限れば紙媒体のデジタル化ですが、社会全体の文化活動の記録という意味ではあらゆる種類のメディアが対象になり、本だけを扱っていれば良いとは言えなくなってきます。
図書館の役割は資料の収集・保存・利用提供であるという原点に返り、デジタル化・ビッグデータ時代の利点を活かして新しいやり方で活動する。
そのための資格としてデジタル・アーキビストが認定されており、今年資格を取るために既に動いています。
世の中には朽ちかけボロボロになっている古い書物がまだ無限に存在しています。
それこそ日本中の図書館司書が全員デジタルアーキビストになってもまだ処理しきれないのではないかと思うほど膨大な量です。
今後数百年くらいでそれも解消されるかもしれませんが、それまではまだ容易にAIに代替できる仕事ではないと思います。
提案型コンサルができる図書館司書も必要
もうひとつは、ビッグデータの世の中で画一的な答えに流されず豊かな人生を送るために図書館がいかに重要な役割を担っているかを価値として提供できるようにすること。
正解しか出せないAIの機能に対して、時には人生に波風立てたり無駄や回り道と思えるような資料を提示してみることで、新しい視点や価値観を利用者に提起する。
既にオススメ本特集企画などでやっているじゃないかと思われるかもしれませんが、その個人レファレンス版を大々的に打ち出し、世間にプレゼンテーションして職業の価値を高める。
そしてそれがAIやIoTだけでは補えないことをしっかり証明してみせる。
ただし、その仕事を効果的に行うためにAIやIoTを十二分に使いこなせなければなりません。
図書館司書に必要な資格や勉強と、将来に向けての考え方について
司書資格は必要です。民間会社だとなくても働ける所もありますが、仕事の範囲も限られますし時給や資格手当など待遇でも差が出ます。
たいていの自治体では正規雇用職員は年齢制限があるため、最初から図書館で働きたいと思うなら新卒か第2新卒で求人に募集する方が良いでしょう。
ただし、仮に図書館司書の稼ぎだけでは将来不安だとしても公務員で採用されると副業ができません。
また、経験が重視される仕事として何年もそこで働ける人もいる反面、公務員の場合図書館とは全く関係無い部署へ異動させられる、非正規職員としての採用ならば単年契約という不安定な要素もあり、
勤めている図書館に民間会社が参入してくると職を奪われる危険性もあります。
昨年末の某区立図書館のストライキ騒動が正にそれです。
逆に図書館司書として長く働きたいなら、最初から民間会社へ入るのも手です。
自分も年齢制限で公務員には募集出来なかったのですがこちらはそんなことも無く採用されています。
基本は単年更新の契約社員ですが、余程問題が無い限り解雇や雇い止めはありません。
大手は図書館専業なので畑違いの仕事へ変えられることもなく、労務管理やコンプライアンス、個人情報保護にもうるさいので職業倫理はむしろ高いと感じます。
どちらの道を選ぶにせよ図書館での仕事を希望する人はたいてい本が好きだからなのでしょうが、ただ本が好きなだけでは頭打ちになって務まらないと思います。
向学心、好奇心があってずっと新しい物や事を貪欲に学び続けられる、常に何か今と違うやり方や考え方を求める人がこの業界には向いていると思います。
また文系色が強く、女性の多い業界のせいか、PCスキルやIT関連などの情報科学、自然科学系に弱いイメージがあります。
図書館資料は今やメタデータの塊でもあり検索と分析が肝になるため、データベースやプログラム、電子コンテンツの知識がより重要になってくることは間違いないでしょう。
本当に時間があるのならばネットのスキルは身に着けた方が良いと思います!これから生き残るためには必須のすきるですから・・。
あなたの業界の意見お待ちしています!