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今後医師の仕事はAIでなくなるのか?36歳の現役勤務医の予測・・

勤続年数12年目の医師です。36歳で、年収は1200万円です。 医師の業務は、主に診断と治療の二つになります。

 患者さんの症候からどのような病気が考えられるか、その鑑別診断を挙げつつ、適切な治療方針をたてていきます。

医師のそのプロセスは、今までの臨床研究や基礎研究などに裏打ちされているのですが、徐々に病因が解明されていくにつれて専門的な知識が増えていき、内科の全分野を網羅することは困難になっています。

 総合病院で診療科が細かく分かれているのは、医療を細分化しなければ人間の脳ではフォローしきれないからです。

どんな脳外科のエキスパートだとしても、皮膚病については素人ですし、どんなに心臓に詳しい循環器内科医だとしても、最新のがん治療には疎いものです。

ところが、AI,つまりコンピュータになると話は変わってくるでしょう。

 どこまでもデータを覚えることができますから、人間の医師では覚えきれない医学の知識を詰め込むことができます。少なくとも、医師国家試験のようなクイズ問題は、数年以内にAIの方が人間の医学生を上回るでしょう。

目次

医師の仕事が全部AIでなくなるわけではない

 では、医師の仕事がすっかりAIにとって代わられてしまうかと言うと、それは考えにくい気がします。なぜならば、患者さんの訴える内容が、いつもクリアカットではないからです。

たとえば、「胸が苦しい」と言って救急車で運ばれてくる患者さんがいます。

 ですが、「苦しい」という訴えでは、どんな症状なのかよくわからないのです。

「胸がしめつけられて痛い」のも、「息苦しい」のも、「胸がどかどかして動悸する」のも、そして「胸やけがする」のも、すべて「苦しい」のです。

ですから、お医者さんはさらに症状の詳細を尋ねるのです。

そこまではAIでもできると思いますが、患者さんがみんな詳細にテキパキと症状を訴えられるかというと、そうとは限りません。

なかなか症状を表現ができない方も多いですし、認知症や精神疾患のため、そもそもなぜ受診しているのかすら把握できていない患者さんもいます。

そうしたさまざまな状況に応じながら対応していくのが臨床医の仕事ですから、ある程度のファジーな面が無ければ仕事が成立しません。

「息苦しい」という訴えの内容を、どうしても「つらい」としか表現できない患者さんもいるのです。

正直なところ、AIにそこまでの柔軟性を求めるには、相当な時間がかかると思いますし、よしんば突拍子もない応答に対応できるくらいの知能に発展したとしても、人間並みのファジーさになっているでしょうから、誤診も増してしまうでしょう。

内科と外科にAIがどう取り込まれていくのか?


 おそらく、内科医にとってのAIは、鑑別診断の手助けをしてもらう補助的な役割なのではないかと想像します。

将来的に臨床AIが普及するかどうかは不透明ですが、その診断能は間違いなく人間を凌駕するでしょうから、ニーズは大きいと思います。

 一方で、外科的手術はどうでしょうか?

 ロボット手術がSF映画でたびたび登場しますが、筆者が思うに、プロフェッショナルな領域には到達し難いのではないかと考えます。

 手術では、患者さん毎の手ごたえがかなり異なります。

皮膚が硬めの人もいれば、しわくちゃでゆるゆるの方もいます。糸を結ぶ力加減、針の刺入角度・・・どれも一人として同じ患者さんはいません

職人さんが仕上げる和紙と、ロボットが工場で仕上げる西洋紙を比べると、圧倒的に職人さんの作った和紙の方が耐久性にも優れています。

また、陶器の便座や新幹線のノーズなども、職人さんが仕上げていると言われています。

それらと同じように、外科的手術については、外科医という職人さんでなければ、一定の医療水準を保てない気がします。

むしろ術後管理などの手伝いをAIが担い、外科医がきちんと手術に専念できるようなサポート体制になる方が現実的でしょう。

AIがそばで内科的なアドバイスをしてくれるならば、外科医としても心強いのではないでしょう。

医師はAI時代に備えてどんなスキルを磨いていくべきか?

医師の診断能は、いずれAIが凌駕してしまうのは間違いないでしょうから、無駄に張り合おうとはせず、人間のお医者さんにしかできないことを考えるべきです。

AIが普及すれば、おそらく人間の医師の仕事は、AIが提示する鑑別診断の中から、目の前の患者さんに最も適していると思われる診断と治療方針を提示する・・という流れになるでしょう。

ですが、患者さんはただ一つの病気だけしか持っていないとは限らないのです。

 たとえば、気管支喘息を有している患者さんが、どこか血管が詰まり、ヨード造影剤という検査薬を使って調べないとならない状況に陥っているとします。

一方で、気管支喘息を有した患者さんは、ヨード造影剤によって喘息発作が誘発されたりする可能性が20倍ほど高くなります。

こうした状況で、ヨード造影剤を使って検査をするべきかしないべきか、判断に迫られるのです。血管が詰まる病気が濃厚に疑われつから調べるのか、なんともないことを確認するために調べるのか、そうしたニュアンスによっても違ってくるでしょう。

このさじ加減を、患者さんと相談しながら決定していくのは、やはり心情への配慮ができる人間のお医者さんにしかできないことなのではないかと思います。

 もちろん、長所は短所でもありますから、相手が人間の医者だからこそ発生するトラブルもあるでしょう。

患者さんと口論になるシーンが散見されますが、患者さんが起こる原因は、医師の言っている内容ではなく、その態度や話し口調などが多いようです。

相手が感情を持っているからこそ発生するトラブルでしょう。

しかし、診断をくだすのが無機質な機械であれば、なにか諫言や助言をされたとしても、あたかもネットの性格診断のゲームのような感覚で、そこまで腹が立つことはないのではないでしょうか?

医者は今後もAIと患者の両方に向き合って学ぶべき

 賛否の議論にかかわらず、AIは二次関数的な速度で急激に進歩しています。近い将来、AIが医師の補助診断マシーンとして臨床応用されるのは間違いないでしょう。

具体的には電子カルテシステムに組み込まれ、医師の入力したキーワードと検査結果をもとに、考えられる鑑別診断や治療方針が提示される・・・そんな未来が予想されます。

 ですが、やはり機械の診断です。

 機械翻訳が正確とは言い難いのと同じように、臨床の世界では各種データや患者さんの生の訴えをもとに、”意訳”をしなければなりません。

もしかしたら「なんでこんな診断だと思ったんだ!?」「だってAIがそう表示しましたから・・・」という指導医と研修医のやりとりが出てくる世の中になるかもしれません。

そして、そんなやりとりが続いていくうちに、AIの能力もどんどん向上していく、いずれは指導医のメンツすら潰してしまうような圧倒的な診断能を示していくかもしれません。

そうなると、すっかりAIのくだす診断に依存してしまう若い医師が登場する恐れがあります。

自らは何も思考することなく、「この患者さんの病気ってよくわかんないけど、とりあえずAIの言うとおりこの薬出したら良くなったyo」などという世界が訪れるかもしれません

 AIの性能がよくて診断が当たるなら、それでいいじゃないか、という意見も出てくるでしょう。

 ですが、AIはあくまでも診断の手助けをする道具に過ぎず、患者さんに対して責任をもって診察をしていくのは、あくまでも人間のお医者さんの役目です。

患者さんの訴えがファジーである以上は、AIの技術がどれだけ進歩しようと、その診断は不確実なものなのです。なにか間違いがあってもAIは罰せられません。

なぜならただの機械だからです。

誤診したとして、手術器具のせいにしますか?レントゲン装置の不備のせいにしますか?

医者に神通力があるわけではないので、なんでも医者の診断力のせいだと結びつけるのは酷ではありますが、社会からはそうした期待を向けられて、国家資格を与えられているわけです。

最新の技術がどれだけ発展したとしても、決して甘えずに自ら学び続ける姿勢をつらぬいてほしいと思います。

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コメント一覧 (4件)

  • 問診についての曖昧さはその通りだと思います。それを意訳するのが医師の腕の見せ所なのかもしれませんが、ただIoTデバイスによるヘルスケアモニタリングがその曖昧さをなくす可能性があります。

    心拍、血糖値、睡眠、尿成分、皮膚からでるガス、歩様… ざっと知っているだけでこれだけモニタリングできる指標はあり今後はさらに拡大していくと思います。今出ていないセンサでも、これらのセンサの有効性が示されてくると加速的に開発が進むことは間違いないと思います。

    • コメントありがとうございます。TVを見ているとこのままでは日本の医療が崩壊しそうで怖いです。AIが少しでも医者の労働時間削減になってくればいいと思ってます♪

  • 胸が痛いのであれば各種検査を実施して、検出されたデータをメインのアルゴリズムに渡すことでかなり正確な精度で病名が出るようになります。
    間違いなく、機械が直接データのやりとりをする未来がきますよ。
    人間の心の機微などどうでもいいのです。現に症状として現れており、検査で嘘偽りなくデータとして出てくるのですから。
    はっきり言ってお役御免です。

    • こめんとありがとうございます。遺伝子検査などが一般に普及すればさらに自動判定の精度あがりそうですね!

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