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塾業界の厳しい労働環境と問題点を17年現場に努めた39歳の女性が語る

39歳女性,塾業界での仕事経験は17年です。大学を出た後,都内の私立中高一貫校の教員として9年働きました。

仕事の厳しさと新しい形の教育に携わりたくなり今の会社に転職しました。

 

今の会社の勤続年数は8年です。

 

年収は入社当初は400万円ほど,現在は700万円ほどになります。全国勤務で異動も多く,少なくとも5年に1度は部署移動や勤務地移動によって転居する生活をしています。

 

【 塾業界の現状の問題点 】

 

  • 今後の社会で少子高齢化が改善されなければ,長期的には収益は悪化する方向
  • 塾は原則学校終了後に生徒が来るので,勤務時間が午後から夜にならざるを得ず,長時間労働になりやすい
  • 教室長や管理職に生徒獲得の営業ノルマがきつく,他塾や同じ塾の他教室との競争が激しく,ブラック化しやすい
  • 手のかかる生徒やクレーマーめいた保護者が多く,精神的に病む社員が多い

 

目次

塾業界はやはりブラック!孤立しやすい環境が問題

 

一番の問題点は,仕事がブラック化しやすく心を病む社員が多いことだと思います。

 

ブラック化されやすい一番の理由は,塾という仕事の構造上,周囲に相談したり一緒にグループで取り組んだりすることがしにくく,孤立しやすいことです。

 

入社するとしばらくの間は研修が行われ,その後は原則的に1人で1つの教室に配属されて自分で塾運営をしていくことになります。

個別指導塾はノルマも厳しい

 

本部からは生徒獲得と収益確保という重い営業ノルマが課され,他の塾との競争だけでなく自社の他の教室との競争も激しく,自分で優秀な講師を雇い,広告を打って生徒を集め,評判を高めて生徒数を増やして収益を上げていく必要があります。

 

他の教室長と情報交換したりすることはできますし,配布用のチラシなどは本部から得ることができますが,まだ若いうちから,もしくはあまり経験がないうちから,教室長の力量が試されることになります。

 

その重圧はものすごいものがあり,押しつぶされて心を病む社員が多くいます。

 

日常的に上司がいるわけではないので,普段の仕事ぶりを判断する基準はほぼ収益でしかなく,人事評価はほぼその1点のみで判断され,使えない人間は過疎地の教室に追いやられていきます。

 

教育という仕事の特性からも,生徒のためにできる仕事の内容には限りがなく,生徒や保護者の評判を得て生徒数を増やし売り上げを上げるためには,労働時間も長時間になりがちです。

 

塾は通常午後から勤務して教室の準備をし,塾の終わる夜10時ごろに退勤する勤務時間になりますが,10時に仕事を終えられる社員は多くなく,終電に乗れずに塾に泊まりこんだり,周囲のホテルに泊まったるすることは日常茶飯事です。

 

最近は生徒や保護者にクレーマーも多く,成績が上がらなかったり,志望校に入れなかったりすると怒鳴り込んできたり,延々電話をかけてきたり,胸ぐらをつかんでくる保護者もいます。

 

働き方改革後もノルマと残業も解消されない

働き方改革が始まったことで,会社には多少,勤務時間をしっかり管理して残業時間が規定を超えないようにしていこうという動きが出てきました。

 

有給も最低限の日数は消化するように指示が出て,強引にとらされている社員が多くいます。タイムカードも導入されて,厳密に報告するようにもなりました。

 

その点,社会の動きに合わせて変化しようという意識は感じられます。

 

しかし,従来からあった営業ノルマに対する圧力や,基本的な仕事量は変わらないので,勤務時間の短縮や有休の取得ができるわけがありません。

 

実際は,タイムカードを押してから残業をする,いわゆるサービス残業や,有給と報告しておいて出勤して仕事をしている社員がほとんどです。

 

教室長クラスはほぼ有給がない

 

だいたい,教室長が「有給だからこの日は塾は閉めます」などという塾があるわけがなく,パートのスタッフを雇って営業したとしても,どうしても対応しなくてはいけない案件が生じて出勤したりすることばかりで,基本的には休みは週1日,場合によっては1日も休みがない週も普通にあります。

 

これから少しずつ変化していくのかもしれませんが,会社としては対応しおうという兆しはあるけれどまだほとんど何も変わっていないというのが実情です。

個人での対応は,仕事が残っていても必ず残業は30分程度,長くても1時間程度で終えて帰宅し,翌日少し早めに出勤して間に合わせるようにしています。

 

塾に泊まりこんだりする生活が常態化することを避けるためです。

 

また,経費が嵩んだとしてもスタッフを常時雇い,自分がいなくてもある程度現場が回るようにしています。

 

経費によって利益が圧迫されはしますが,長く続けるためには開き直りもある程度必要なことだと思います。

 

塾講師として一番キツいところとやりがいについて

一番きつい所は,生徒のために一生懸命取り組んで全力を尽くしたのに,結果が出ないことです。

実力と志望校の開きが大きい生徒でも,塾で頑張り続けることで実力がつき,成績が上がって志望の大学や高校に入学できる生徒はたくさんいます。

 

保護者の方の協力が得られれば,そうなる可能性も高いです。

 

しかし,中には,生徒もやる気があり保護者の協力があっても,そして面談を何度も繰り返したり講師が熱心に指導したとしても,残念ながら合格することができない生徒もいます。

 

そういう生徒を出してしまった時が一番きつくつらい時です。

 

高校入試はある程度最低限のすべり止めを決めて受験するのでどこかしらの高校には入学してそこで頑張るように生徒の気持ちを持っていくこともできます。

 

しかし大学入試の場合は最悪全部落ちてしまって浪人というケースもあり、本人や家族の精神・金銭的な負担がかさなります。

 

そういう時は大きな責任を果たせなかったという思いが強く,自己嫌悪で精神的に非常に落ち込みます。

 

それでも,最低限前向きな気持ちで浪人生活をスタートできるようにサポートすることに全力は尽くしますがつらいです。

 

 

逆に,やりがいは生徒の努力が実って志望する大学や高校に合格できることです。保護者と生徒の嬉しい顔を見る時に,とても大きなやりがいを感じます。

 

そのやりがいがあるからこそ,きついことがあっても何とか頑張れると感じています。

 

利益が出なくて上司に問い詰められたり,厳しく本部から指摘されたり,勤務時間が長くて疲れることは,きつくても仕方がないとある程度開き直っていられるのですが,対生徒や保護者の期待に応えられないことが一番きついです。

 

 

今後、塾業界の職場環境はどう変わっていくのか?

働き方改革は進み,労働環境的なブラックさは少しずつ改善されていくのではないかと思います。

3年後だと劇的な変化はないかもしれませんが,ブラック企業に対する社会の見方も厳しくなっていて,社員による告発なども見られるので,会社は変わらざるを得ないと思います。

また,今の社会状況の中で,塾業界の中ではオンラインで授業をする動きがかなり強まっているので,3年後はかなりの塾で授業のオンライン化が可能になると思います。

 

オンライン専門の塾や家庭教師の会社もすでに出始めています。

 

学校の授業をオンラインで実施するところも増えていて,これを機に家庭でのインターネット環境も大きく進むと思われるので,ご家庭にとってもオンライン授業の塾を選ぶハードルはぐっと下がって,利用しやすくなると考えています。

 

そして,対面式の授業をやる塾でも,集団授業よりも少人数授業や個別授業が増えていくと予想しています。

また,今よりもさらに少子化が進み,景気の悪化も考えられるので,塾業界は淘汰が進むと思います。生き残る塾は生き残るし,たとえ大手であっても,生徒や保護者の支持が得られない塾は倒産したり,規模を縮小したり,他塾と合併するところも出てくると考えています。

 

塾そのものの居心地が良かったり,とにかく合格を勝ち取ることができるなど,大きな成果を上げて生徒が集まるところには集まるだろうし,どっちつかずで大きな魅力がない塾は厳しい先行きが待っているということです。

 

実際塾業界に転職するのはおすすめか?

塾業界に転職するのは,人によってはおすすめできます。

 

これから新しい教育を作り上げていくことに強い興味がある人,生徒や保護者のために自分を多少犠牲にしてでも働きたいという人,仕事にやりがいを最も求めている人,などにはおすすめできます。

 

しかし,何となく塾や教育に興味があるだけだったり,人と接するのが好きだというくらいの曖昧な理由だったりで転職するのはおすすめできません。

 

覚悟が足りなくて転職してきた社員はだいたい,3年以内に他業種に転職していきます

塾は飲食店の次に転職が多い業界です。

 

人の異動はしょっちゅうで,毎年多くの社員が退職しまた新しい社員が入ってきて,非常にサイクルが速いので,いつも求人をしています。

 

転職を考えるなら,しっかり業界研究をして,知人で塾業界で働いている人がいたらしっかりリサーチして,良い点と悪い点を両方知ったうえで転職する方がよいと思います。

 

おすすめの部署は,教育に関わりたいなら教室長です。

 

ただ,塾といっても仕事は多岐にわたるので,事務的にサポートしたいなら事務職や営業職もあります。注意したいのは,教室長は教科を受け持って実際に生徒に授業をする仕事がメインではないということです。

 

教えたいなら,自分で小さい塾を開いて生徒募集から教えることまで全てを自分でやるか,講師として勤めるしかありません。

 

講師は基本的にパートタイムやアルバイト,または委託契約という形で雇われる場合が多く,なかなか社員の口はないかと思います。

教員免許はあってもよいですが,特に必要ではありません。

 

それよりも,いろいろな検定試験に挑戦した経験や,コミュニケーション能力を高めておくこと,メンタルを強くしておくことをお勧めします。

 

今後はオンラインのスキルも必ず求められてきます。若い人はそこも視野に勉強していってください。

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