放送業界に5年勤めております。27歳で300万程度の年収です。今回はこの業界の問題点と将来性ついて、自分なりの見解を述べさせてください。
この業界では不規則な労働が一番大きな問題だと思ってます。
深夜や早朝に現場があったり、あるいは生放送もあるため、一般的なビジネスタイムという概念はありません。
また、年功序列の風土は根強いです。放送系なので若い人も多いと期待していましたが入社してからは違いました。
業界的なコネクションを担保とした発言力になびき、若手の意見やアイデアなどは蔑ろにされることが多く、最悪企画書をそのまま転用されることもあります。
立場の低い人間には厳しく、また新陳代謝も進まないため、中間的な年齢層も燻っているケースが多々あります。
放送業界にもAI化の波は押し寄せている
放送は、放送免許があってこそのビジネスなので、なくなることはないはずです。
ただ、youtubeなどの台頭で、可処分時間の奪い合いに敗れているのは明らかです。
このまま存在感を失っていくのか、あるいは逆転現象が起きるのか、コロナ禍によって在宅機会が増えたことによって、図らずも勝負の時が近づいているのを感じます。
製作費も削減されているのを受けて、将来的には現場に入る人数は減っていくと思います。
AIアナウンサーが仕事を奪う可能性はある
例えばAIアナウンサーは既にさまざまなシーンで活躍しています。
とはいえ、「読み上げ」に止まっている現状、喋り手のクオリティを追求するのであれば、もう少し技術の発展を待たなくてはなりません。
ソフトの発展は目まぐるしいので、後5年したら時代が変わる可能性があります。
今でもAIが大喜利などもできるので、ひょっとしたらAI同士のミニトーク番組くらいなら、実現する日が近いかもしれないです。
裏方の仕事はAIを使いこなして仕事が増える
一方で裏方は、AIによって職を奪われることはないと思っています。
演出の仕方や、情報の差し込み、人間としてのコミュニティや判断力は、まだまだAIの及ばないところにあると感じます。
つまり、将来的な放送の現場は、AIの喋り手をコントロールする裏方が最低2名程度、で回せるものだと思っています。
AIに勝る知識の掛け合わせ、を保持する裏方は、ニーズが増えて、給料が上がるのではと思っています。
編集などの作業はAIに任せて、頭脳一つで現場に入れる、そんな新時代の放送業界のスタッフが誕生するかもしれません。
そうすれば、より質の高い放送が実現できるのでは、と思っています。
放送業界でAIが活躍している実例と問題点
機械化、という意味合いでは、データの一括管理が導入されました。デスクワークで用いる重要なファイルや、収録した放送音源などを保管しています。
CD音源などもデータ化しているので、CDが不要になりました。貸し出しに対応するスタッフがいたのですが、当然人員削減になりました。
やはり管理や窓口業務は減っていくのだと感じています。
同様に、電話オペレーション業務も廃止が検討されています。
問い合わせは全てHPからAIによるチャットやメールフォームからの連絡に一本化。
電話番号による大代表の窓口を無くすことによって、より効率的な対応ができるよう進めています。
電話を受けていたスタッフが人員の削減対象です。
コロナウイルスの影響でテレワークを増やしており、電話をとるためだけに出社するケースを無くすという意味合いも大きいようです。
アフターコロナの世界では、出社リスクを最小限にする意識が必要なのだと感じております。
ただ、データのバックアップ体制はきちんと確保する必要があり、先日一部放送用のデータが破損しているケースがありました。
業者による復旧作業などを必要とし、情報管理が大きな課題になりました。ただ、個々人の意識で解決できるものだと思っています。
この辺を完全に無人化するのは難しいと思います。
AIに放送業界の仕事が奪われないようにすべきこと
先述してしまいましたが、知識の掛け合わせをする能力と、瞬間の判断力です。放送業界は雑多な情報の詰め合わせですが、そのどれもが狙い澄まされています。
AIには膨大なデータベースがあり、蓄積があります。
きっと、もう既に私たちは勝てないことでしょう。
しかしながら、それらを如何に組み合わせて情報にするのか、という掛け算の力では、まだ私たちに勝機があるものだと思っています。
また、一瞬の判断で演出を変えてみたり、その瞬間に宿るハートは、AIには存在しないはずです。
もしくは速報の差し込みはここでいいのか、などは、人間で判断したいのかもしれません。
これらの武器で、これからの時代を生き抜いていきたいです。
しかし、そもそも奪う奪われるの争いではなく、上手く付き合っていくことが大事だと思っています。
単純作業はAIに任せる。その任せる仕事が増やせる様になれば、私たちの仕事はもっと楽になるはずだと信じています。
そのためにも、日々のアウトプットを欠かさないようにしています。それが鈍ってしまっては、自分たちのいる意味がない。インプットは機械にお任せ。
それを持って、どうやって昇華させようか、という頭脳労働に注力したいと思っています。
おそらく喋り手も同じことを思っているはずです。
「どうやったら面白くなるか?人間への伝え方は人間で考えよう!そのためにも、日頃の訓練を怠らないようにしよう」という意識改革が、AI時代にふさわしい放送マンの姿勢だと思っています。
将来放送業界に入りたい方へ!可能性を信じて頑張ろう!!
放送業界は本当にハードです。頭脳労働でありながら肉体労働である、という二律背反が平然と存在しています。
しかしながら作り上げたものに返ってくるリアクションはかけがえのないものであり、それを目にするたびに情熱や愛情で成り立っている仕事なのだと感じています。
AIに仕事を奪われる可能性は往々にしてありますが、それはあくまでも作業の話であって、そのハートは奪われません。
むしろ、編集だったりデスクワークだったり、時間のかかる仕事を預けて、よりクオリティの高い放送を目指せる可能性に満ちていると思ってます。
空いた時間でインプットもできるし、アウトプットもできる。そんな未来が待っていると信じています。
今、面白いコンテンツはたくさんありますが、その伝統はテレビやラジオにあります。
youtubeで活躍するスタッフも、はじめからそこで食っていこうと思っていた人は少数のはず。
そのノウハウや、作品への思い入れ、放送業界で勉強できることはたくさんあります。
大きな地殻変動が起きている昨今だからこそ、その歴史を垣間見てみる、という選択肢もいいかもしれません。
その伝統と、時代の革新が掛け合わさった時、あらゆるコンテンツを凌駕するものができるかもしれません。
そんな可能性に溢れた業界だと思っています。
AI時代に生きながら、「頭に汗をかきたい!」という人は是非、この業界に入ってみてください。絶対に他の業界では経験できないことが待っていると思います。
あなたの業界の意見お待ちしています!